タイのゴミ問題・リサイクル事情
サワディーカLABタイ語学校です。
近頃タイ北部のチェンマイやその周辺地域でインドの都市ニューデリーを超えるほど大気汚染レベルが深刻化し、政府が屋外で活動することを避けるよう市民に警告。さらに観光地としても有名なチェンマイは経済的にも大きなダメージを受けてしまいました。主な原因として挙げられるのは、森林火災の発生や作物を燃やして出るPM2.5であったそうです。そのニュースを聞いて、確かにタイの環境問題は経済成長と共にますます深刻化していくように感じます。私自身もタイで暮らし始めてちょっとしたカルチャーショックだったのは、”街中でゴミの分別をするためのゴミ箱がすくない。そのためペットボトルや紙を分別せずにそのままゴミ箱に捨てる人が多い” ということでした。日本のようにゴミ分別を適切に行わず、どうやってリサイクルされているのだろう疑問に思いました。なので今回は深刻化するタイの環境問題を改善するために重要な「タイのゴミ問題・リサイクル事情」についてご紹介したいと思います。
そもそもリサイクルの必要性とは?
主な理由として3つ挙げられます。
- 資源の有効活用: リサイクルによって、限られた資源を有効に活用することができます。再利用された素材は新たな製品に加工されるため、新たな原料の採掘や生産を行う必要が減ります。これにより、天然資源の節約と環境負荷の軽減が期待できます。
- エネルギーの節約: リサイクルは、新たな原料を採掘・生産するよりもエネルギーを節約することができます。再資源化は通常、既に加工された素材を使用するため、製造工程でのエネルギー使用量が低減されます。エネルギーの節約により、温室効果ガスの排出量や環境への負荷を減らすことができます。
- 廃棄物の減量: リサイクルは廃棄物の減量につながります。再資源化された素材を使用することで、ごみの最終処分量を減らすことができます。廃棄物の減量は、埋め立て地や焼却施設の利用を減らし、環境への負荷を軽減することにつながります。
タイのゴミ問題とリサイクル問題
続いてタイの近年のゴミ問題について説明します。
2020年のタイの廃棄物総排出量は、4,400万トン。大きく①都市廃棄物・②産業廃棄物・③有害廃棄物に分けられています。特にコロナ化で激増したといわれるのが①の都市廃棄物でした。都市廃棄物とは、日常的にゴミとなってしまう紙、ポリ袋や食品容器のことです。タイには日頃から外食する文化が浸透していたのですが、コロナが原因でレストランや屋台で食事ができなくなりその代わりにフードデリバリーが急増。当然それに伴い容器包装をするために使われたゴミの回収・処理が追い付かなくなったそうです。今後もフードデリバリーサービスを利用する割合は増えていく一方で、さらにタイのゴミ問題は悪化する恐れがあります。
次にタイのリサイクル問題が未だに上手くいかない理由を3つ紹介します。
- 上記でもお伝えしたように人口の急増と経済成長に伴って、都市廃棄物の量が増加。このため、道端にポイ捨てされたままのゴミが増加
- タイでは、リサイクルに関する教育や啓発活動が不足しているため、多くの人々が廃棄物の適切な分別方法やリサイクルの重要性について知識を持っていません。また、廃棄物の処理に関連する法律や規制の実施や遵守も進んでいるとはいえない状況です。
- リサイクル施設の不足や技術的な制約も問題となっています。十分なリサイクル施設が整備されておらず、一部の地域ではリサイクルが困難な状況にあります。また、一部の廃棄物は適切に処理されるべきですが、技術的な制約やコストの問題から処理されず、環境への負荷となっています。
これらの要因が組み合わさり、タイではリサイクル問題が深刻化しています。しかし、最近では政府や民間企業、市民団体などが積極的に取り組みを行っており、リサイクル意識の向上やインフラストラクチャーの整備など、問題の解決に向けた努力が行われています。
タイ政府や民間企業、市民団体のリサイクル促進活動
タイ政府と民間企業、市民団体は、国民に対して積極的にリサイクル問題に参加してもらうためさまざまな活動を行っています。
- 教育と啓発活動:政府や市民団体は、リサイクルに関する教育キャンペーンを実施しています。学校やコミュニティでのワークショップやセミナーを通じて、廃棄物の適切な分別方法やリサイクルの重要性について国民の意識を高めています。今後も地域ごとのリサイクルイニシアティブの促進など、積極的なリサイクルキャンペーンに注目が集まっています。
- リサイクル施設の整備:政府は、リサイクル施設の整備に取り組んでいます。廃棄物の分別や処理を行うための施設やリサイクル工場を設立し、廃棄物の処理と再利用を促進しています。
- 法律と規制の改善:タイ政府は廃棄物管理に関する法律と規制の改善に取り組んでいます。違法な廃棄物処理や不法投棄を取り締まるための取り組みを強化し、廃棄物の適切な処理とリサイクルを義務付ける法的枠組みを整備しています。
- リサイクル業界の支援:政府は、リサイクル業界の発展を支援しています。リサイクル業者への補助金や助成金の提供、技術的な支援、市場の拡大などを通じて、リサイクル産業の成長を促進しています。
バイオプラスチック産業
最後にタイ政府が支援に力を入れているバイオプラスチック産業について紹介します。皆さんは、バイオプラスチックと今までのプラスチックと大きく違う点をご存じですか?
答えは原料にバイオマスが使用されていることです。バイオマスとは、自然界に存在する植物で成長過程で大気中の二酸化炭素を吸収。そのため焼却処理してもそこから排出される二酸化炭素と相殺されるわけなんです。タイにはバイオ関連に必要な原料が豊富で、製品を輸出するために大切な地理的に位置も良く好条件が整っているんですね。実は日本でも環境省・経済産業省・農林水産省・文部科学省合同で「2030年までにバイオプラスチックを最大限200万トン導入する」という目標を掲げ補助金制度を設けるなど積極的にバイオプラスチックの普及を促しています。バイオマスの使用用途としては、コンビニのレジ袋やペットボトル、食品包装容器など幅広く、タイの環境問題を解決する重要な役割を果たしそうですね。