タイの高齢化問題:現状と今後の課題

こんにちは!LABタイ語学校です!

日本は現在、65歳以上の人口が3623万人を超え総人口での割合は約30%というところまで来ました。今後2030年ごろにはこの割合がさらに増え、36%まで増加するであろうと予想がされています。

 

日本において超高齢化社会が大きな社会問題の一つであることは周知の事実ですが、タイでも現在高齢化問題が起こり始めているのを知っていますか?

実はタイでは2000年から2001年の時点で高齢社会になっています。

なぜタイで高齢化が起きているのか、そして今後どのようになっていくと予想されているのか。

今回はタイの高齢化事情を簡単に紹介していきます。

 

 

タイの現状と平均寿命

現在のタイの平均寿命は男性が71.8歳で、女性が79.3歳となっています。

タイの平均寿命は年々伸びてきており、マヒドン大学の研究によると、50年前はタイ人の平均寿命は60歳未満だったことから、ここ数十年の医療技術の発達により急速に国民の寿命が伸びたことが考えられます。

 

タイ政府は現在まで、外貨獲得のために観光や、輸出産業の幅広い展開を主な政策として取っていましたが、新たに医療技術や美容整形技術などをもとに外貨獲得を考え始めており、今後はこれを元にさらに平均寿命が伸びていくと考えられます。

 

もちろん、今まで治らなかった病気が完治、あるいは予防できるようになり、より長生きできるようになったのは大変良いことです。しかし、日本やその他先進国の高齢化の現状の前例にあるように、ただ寿命が伸びるだけでは問題もあります。

タイでは一体どのような問題があるのでしょうか?

タイの高齢化の現状

 

タイの国家統計局によると現在(2021年時点)の60歳以上の人口の割合は、1335万8751人となっており、総人口の約19.6%となっています。

このうち内訳は、男性高齢人が、517万4022人で(44.7 パーセント)、女性高齢者が738万4729人で(55.3 パーセント)でした。

 

現在このようになっていますが、先ほども言ったようにこの割合は今後どんどん伸びていくと考えられています。またこれには、単純に寿命が伸びているという問題以外にも子供が生まれなくなってきているという問題もあります。

チュラロンコン大学サシン経営大学院の調査によると、年々子供のいる家庭の数が減っているようです。

以下引用グラフ *共働きと独身での世帯ごとの子供の割合*

*タイでは仏暦が用いられており、仏暦2561年は西暦2018年*

 

グラフから分かる通り、どの世帯においても子供が作られないような状況になってきていることがわかります。

これについての主な原因は、女性の就業者数や就業率の増加や、初婚年齢の上昇、またはライフスタイルの変化によって結婚前にお金を稼ぐなどの考えが増えたことが挙げられます。

 

また高齢者世帯に子供がいない事も問題になっています。

以下引用グラフ *60歳以上の共働きと独身での世帯ごとの子供の割合*

 

タイでは、年をとったら、子供に仕送りをしてもらうなどして生活する文化があるので、年寄り世帯に子供がいないことは大きな問題となります。日本のような社会福祉制度が整っておらず、年金などのシステムは一応はあるものの、貧富の差で主に非貧困層にしか恩恵が得られていません。

 

また長期的な少子高齢化問題により、社会全体でうつ病や、孤独感の増加など、精神面、心理面でも悪影響があるとされており、総合的に見ても、この少子高齢化問題は発展途上国であるタイで深刻かつ、広域的な悪影響となる可能性があります。

 

ではタイは実際に、他の発展途上国や先進国と比べてどのような状況なのでしょうか?

次で様々なデータを用いながら比較していきます。

タイの高齢化とその影響

ここでは、タイの高齢化の影響について、

「人口構造の変化」「経済への影響」「社会保障制度の違い」の三つに関して分けて考えていきます。

「人口構造の変化」

・タイの人口構造と人口ピラミッド

チュラロンコン大学の研究によると、西暦2015年のタイの人口は約6,540万人ほどですが、 2025 年には約 6,200 万人まで減少が続き、2045 年にはわずか 5,590 万人にまで減少することが予想されています。 さらに西暦2055 年には 1,000 万人近く減少することが予想されています。

以下は*タイの人口ピラミッド

左は変化の少ない場合の予想 真ん中は中間予想 右は変化の大きい場合の予想*

 

・日本の人口ピラミッド

以下は*日本の人口ピラミッド 国立社会保障 人間問題研究所HPより*

先進国の日本と比べても、人口構造が似ていることがわかります。現状タイで最も多い人口層は40
〜50代で日本に比べ70歳前後の大きな山がないのが違いです。

 

全体的に見て今後タイは、日本と同じような状況になると考えられます。

「経済への影響」

では、タイでこのまま少子高齢化が深刻化していくと、経済にどのような影響が現れるのでしょうか?

ここでは、タイで今後起こりうるであろう影響を三つあげたいと思います。

・長期的に見るときのGDPの低下
高齢化社会は、経済の多くの側面に影響を及ぼします。

特に、低い出生率の国では、一人当たりのGDPが短期的に増加するかもしれませんが、長期的には労働力の減少とともに経済成長の鈍化が予想されます。労働力の不足は、賃金の上昇やインフレ圧力を引き起こす可能性があり、さらに高齢化が進むと、国の課税ベースが狭まり、政府の歳入が減少する恐れがあります。

 

・国内の貯蓄や投資が減少するリスク
高齢化が進むと、退職などで仕事を辞める人々が増え、これらの人々は蓄積された貯蓄からの支出が増えることになります。これは、国の家計貯蓄や投資の水準に影響を及ぼす可能性があると考えられます。

タイの高齢者調査によれば、高齢者の大部分はいくらかの貯蓄は持っていますが、多くの高齢者は生活のための貯蓄が不十分である可能性が指摘されています。

 

・人々の消費と支出のパターン
高齢化社会では、消費のパターンも変わっていくと考えられています。

年齢は、人々の消費と支出のパターンに大きな影響を与える要因の一つです。高齢者の消費パターンは、若い世代とは異なる傾向があり、例えば、社交や仕事に関連した商品やサービスの消費は減少する一方で、住宅や医療に関連した支出は増加する傾向があります。アユタヤ銀行のエコノミスト、ソンプラウィン・マンプラサート氏の研究によれば、高齢化社会の到来により、特定の家庭用品の消費が増加する可能性があることが示されています。

これらの変化は、製造業やサービス業にとって、新しいビジネスチャンスや市場の変化として捉えることができます。高齢者向けの商品やサービスの需要が増えることは、企業にとって新しい市場の開拓や製品開発の方向性を示唆しています。

 

「タイの社会保障制度」

では、タイではどのような社会保障制度が導入されているのでしょうか?

導入された背景や目的を簡単に紹介していきます。

1. 社会保障制度の背景

タイの社会保障制度は、1990年に「社会保障法」の制定により始まりました。

この法律は、労働者の権利と福祉の保護を目的としており、特に非農業部門で働く労働者を対象として制定されました。

2. 社会保障基金

タイの社会保障制度の中核をなすのが「社会保障基金」です。

この基金は、労働者、雇用主、政府の三者が共同で拠出し、様々な福祉サービスの提供や給付金の支払いに使用されます。

3. 提供されるサービス

社会保障基金からは、以下のようなサービスや給付が提供されます。

  • 医療サービス: 基金加入者やその家族は、公立病院での医療サービスを受けることができます。
  • 失業給付: 一定の条件を満たす失業者には、失業給付が支給されます。
  • 老齢・障害・死亡給付: 高齢や障害、死亡時には、一定の給付が支給されます。

4. 30バーツ医療制度

2001年に導入された「30バーツ医療制度」は、タイの社会保障制度の一部として注目されています。

この制度により、30バーツ(約120円)の自己負担で医療サービスを受けることができるようになりました。この制度は、特に低所得者層の医療アクセスを大きく改善したと言われています。

5. 今後の課題

タイの社会保障制度は、近年の経済成長とともに拡充を続けていますが、高齢化や非正規雇用の増加など、新たな課題も浮上しています。

今後は、これらの課題に対応しながら、さらなる制度の充実が求められると考えられます。

 

 

まとめ

タイも日本と同じように高齢化社会へと進行中であり、これに伴う経済や社会の変化が予想されています。タイの平均寿命の伸びや少子化の進行は、経済や社会保障制度、家族構造など多岐にわたる分野に影響を及ぼしていて、特に、高齢者の増加と子供の数の減少は、今後の経済成長や社会保障制度の持続性に大きな課題をもたらすと考えられます。

しかし、これらの変化は新しいビジネスチャンスや市場の変化としても捉えられ、適切な対応と改革によって、新しい成長の機会として活用することも可能です。

今後のタイの取り組みや政策の方向性が、この高齢化社会をどのように乗り越えるかの鍵となるでしょう。

 

以下引用元 URL一覧

「日本 国立社会保障・人間問題研究所 HP」 https://www.ipss.go.jp/index.asp
「日本外務省 HP」 https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/asia/thailand.html
「タイ チュラロンコン大学 HP」 https://www.chula.ac.th/highlight/79067/
「the coverage HP」 https://www.thecoverage.info/news/content/4967
「Thai PBS HP」 https://www.thaipbs.or.th/news/content/321400
「日本 厚生労働省 PDF」 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/17/dl/t5-12.pdf
「Thai PRP HP」 http://prp.trf.or.th/

 

この記事を書いた人

LABタイ語学校 K.T

LAB thaiko先生のブログ

LABthaiko先生のブログは2018年に産まれて日々多くの記事を作成しています。タイの様々なお役立ち情報を時にはタイ語を交えながらの記事にしたり、ニュースサイトとして、情報媒体としての役割を果たせるよう、もっと皆さんにタイについて知って頂けるようこれからも情報を発信していきます。