タイの英語教育事情に迫る ! 日本との比較から見える共通の課題と展望
サワディーカップ! どうもLABタイ語学校です!
突然ですが、英語は世界共通語でありグローバルなコミュニケーションの鍵を握る重要なツールですよね!
タイでも、ますますその価値が認識され、英語教育が重要視されています。
しかしその取り組みの裏には様々なストーリーがあり、今回はその一部を日本の英語教育と比較しながらお伝えしていきます。
是非、ゆっくりしていってください。
それでは早速タイの英語教育の歴史から見ていきましょう。
※今回の記事ではインターナショナルスクールやその他私立のカリキュラムではなく、公立の小中学校のカリキュラムに焦点を当てています。
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英語教育の歴史
結論を言ってしまうとタイの英語教育は日本よりも進んでいます。
どのように進んでいるのかを先ずは歴史的観点から確認してみましょう。
タイの英語教育の歴史
西九州大学で講師をされている植田 啓嗣氏のコラムによると、タイの英語教育はラマ3世の時代、19 世紀頃に始まり、そこではアメリカ人宣教師による英語教育が施されていました。
そしてラマ6世の時代には、義務教育法が1921年に施行されており、小学4年生から英語を必修としています。
しかし、インドシナ半島で始まった共産主義勢力の拡大を危惧した当時のタイ政府(軍事政権)は、1977年に小学校での英語教育を廃止し、中等教育でも必修であった英語科を選択科目としてしまいました。
※1930年にホーチミン等によりインドシナ半島では共産勢力が生まれ、インドシナ戦争、ベトナム戦争を経て、共産勢力は拡大しました。英語を学ばせる事が自国の共産化につながると考えたのでしょう。
その後1990年代にタイでは経済発展が促進され、その中で英語力のある人材が必要とされました。そして1996年に英語は小学1年生から必修科目となりました。
現在は2008年に導入された基礎教育コア・カリキュラムに基づき、英語は小学1年生から12年生(高校3年生)まで必修科目と本格的なものになっています。
このカリキュラムについては次章にてご説明します。
それでは日本はどうでしょう?
日本の英語教育の歴史
東京外国語大学の「日本における英語教育の歴史と 現状の課題」によると、1872年(明治時代)の学制令から外国語(英語だけではなくフランス語やドイツ語等も)の教育が始まっています。
年号を見れば、日本が進んでいるように思えますが、タイの教育事情とは異なるところがございます。それは小学校の段階で必修であるかどうかです。
文部科学省の資料を引用すると当時の小学校の科目は、「修身・読書・作文・習字・算術・体操とし、土地の状況によっては図画と唱歌を加えることができるとした。」
※修身は現代でいう道徳の授業
つまり当時の日本の小学校では英語は必修科目ではないことになります。
実際に必修としての英語の授業は現代でいう中学、高校、大学で行われていました。
当時の制度上、中学以上は義務教育ではないため、当時の最先端の教育を受けられたのはエリートやお金持ち等のごく一部となります。
時は流れ太平洋戦争あたりには、英語は敵国語として見なされ、教育から排除される傾向もありました。
そして戦後は教育基本法と学校教育法により中学校が義務教育となり、中学で英語教育が義務化されます。
2011年には小学校5、6年から英語が必修科目に入り、2020年に小学校3年生からと引き下げられました。
以上よりタイと比べて日本の英語教育は遅れている事になります。さらに2023年12月現在の日本は小学校1年生の段階での英語は必修ではありません。
比較まとめ
タイでは1921年の時点で小学4年生から英語を必修としていて、1996年には、小学1年生から必修科目とされた。
日本は2011年に小学5,6年生に英語を必修科目として取り入れ、2020年に小学3年生からと引き下げ、2023年現在1、2年生は対象とはなっていない。
英語教育の現状と課題
それでは実際にはタイではどのような英語教育が行われているのでしょうか?
タイ基礎教育コアカリキュラム
([コラム]タイの英語教育より引用)
タイではこのカリキュラムに基づき時間割等が決定され授業を取り組まれています。日本でいう学習指導要領に近いものですね。
外国語の箇所が英語になります。
小学1年生から3年生まで年40時間と英語の授業が設定されており、週1回の授業があることになります。
4年生から6年生は年80時間と週2回、中学生になると年120時間と設定され週3回の英語の授業があります。
授業の内容はコミュニケーション様式(実際に使う事で学習するタイプ)に焦点を当てており、概ね4技能(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)を学習することとなっております。
日本の現状
(文部科学省より引用)
小学3,4年生は週1回程度、5,6年生は週2回程度です。
中学生になると3回から4回ですね。
ただこれらは今のカリキュラムで2020年に標準と定められたもので私が小学3、4年生の時は英語の授業はありませんでしたし、本格的に英語を習い始めるのも中学生からでした。
私の先輩にあたる年代の方々は授業時間数がもっと少ない可能性があります。
そしてご存知の通り授業内容はリーディングと文法がメインの教育です。
私の記憶では英語の授業時間内に日本語を話すことが多かったと思います(笑)。
比較まとめ
カリキュラム通りの時間割が組まれればタイは720時間、日本は最新のカリキュラムで630時間、英語の授業を受けることになります。
しかし、日本人のほとんどの人は改定前のカリキュラムが実施されていたため、小学3、4年生分の70時間を差し引いた560時間が目安なのではないでしょうか。
授業時間数で見れば、タイの教育はの方が英語に触れる機会が多く、日本の英語学習スタイル(詰め込み型の受験用英語学習)よりもタイにおけるコミュニケーション型の教育の方が意味のあるように思えます。
英語能力指数
しかし、2023年のEFによる英語力調査の結果は以下のようになっております。
EF調査 | 平均 | タイ | 日本 |
順位 | × | 101位 | 87位 |
指数(スコア) | 502 | 416 | 457 |
英語レベル | × | 非常に低い | 低い |
(EFのデータより筆者が作図)
※レベルは5段階評価で、非常に高い、高い、標準、低い、非常に低い
※エントリー国は全部で113か国です。
※113か国から220万人の英語力を集計したデータ。
EPI(English Proficiency Index、英語能力指数)というスコアで表され、残念ながら日本も含めて良い結果は出せておりません。
確かにこのデータは指標の一つですが、両国のスコア・評価を無視はできないですね。
それではどのようなことがタイでは課題なのでしょうか。
タイの英語教育の課題
日本の文部科学省が過去に資料をつくっており、そちらを参考にしてみました。
主に問題点として挙げられていたのは、
- 政府の英語教育に対する政策の継続性が欠けている。
- カリキュラムの水準が曖昧で適切な教育ができていない。
- 実態は文法に焦点を当てていて、実践的でない。
- 教員が英語教育に適した雰囲気をつくれていない。
- 予算不足で良い教科書の開発ができない。
- 人材も不足している
これらのみでなく他にも多くの課題が挙げられていました。
日本でも共通した課題がいくつか当てはまりますね。
例えば、文法メインの学習や人手不足は特に日本でも深刻な課題でしょう。
実際にタイ人の元ルームメイトと話し合った際にも、文法しか勉強しない、英語の授業中でも教員ですら母国語でコミュニケーションを取る等々全く同じ問題を抱えていました。
しかし、彼が深刻な顔でうちの国は十分な予算が無いと言った時は息を吞みました。
このように日本もタイも英語教育に対して課題はあります。重要なのはどのようにして解決していくのかです。
実際に日本は小学校3年生からの英語必修化、高校レベルの単語を中学から取り組む、詰め込み型の教育ではなく実践的な英語を使うコミュニケーション型授業の導入をしています。現在は様子見の段階です。
それではタイはどのように解決していくのでしょうか?
英語教育未来への展望
前章のような問題は抱えていますが、「タイ王国の英語教育」を引用すると
「できるところから実行していく、実行する部分では積極的にやっていこうとする、タイ的な 前向きな姿勢に対して、今後の成果を期待することができるのである。」
確かに予算や人材不足はそう簡単に解決できることではありません。しかし授業内容は少しでも変えられるはずです。
特に方針として掲げるコミュニケーションを重視した文法ばかりではない授業は教員が取り組もうとすればできます。
また、ポーンピモン・プラソンポーン博士の「タイの初等教育段階での英語教育」によると
実際にタイの教育省はブリティッシュカウンシルと協力の下、英語教員に対する研修会を行っています。
学校側の取り組みとしては、英語キャンプや英語コンテスト等の授業外でも取り組める機会を段階的に作っています。
実は元ルームメイトもそのような活動から語学留学に興味を持ったと言っておりました。
直ぐに効果を出すのは難しいですが、この章の冒頭でお伝えしたようにできることから積極的に取り組むことが今後大事になってくると私も考えております。
子供の動機を引き出すための学校側の取り組みってとても大事ですよね。
今後はこのような取り組みに加え少しずつではありますが、タイの英語教育が改善されることが期待されます。
日本も負けないように頑張りましょう!
さいごに
いかがでしたか?
今回は日本の英語教育事情にも触れながらタイの英語教育の歴史、現状、展望をお伝えしてきました。
英語教育には、実践的かつ効果的な学習方法が必要であり、現在は発展段階ですが、教育者、政府、学生が協力し、豊かなコミュニケーション力を養い、グローバルな舞台で成功する未来が期待できます。
もちろん学習環境や教育資源の向上に向けて取り組むことも重要です。
両国の英語教育がますます発展し、学生たちがグローバルな舞台で活躍できる未来は必ず訪れるでしょう!
それではコープクン・クラップ!またお会いしましょう!