タイの刀剣文化と歴史:日本刀の影響とタイの武術クラビー・クラボーン
サワディーカップ! どうもLABタイ語学校です!
突然ですが、皆さんは刀剣と聞くとどのような物をイメージしますか?
恐らく、日本刀が最初に浮かぶのではないでしょうか。
そしてその日本刀がタイの刀剣文化に大きな影響を与えた事をご存知でしょうか?
そこで今回はタイの歴史と伝統的な刀に触れながら、タイの刀剣文化についてお伝えしていきます。
ぜひ最後までお付き合いください。先ずは、タイの伝統的な刀 Dha(ダー)について見ていきましょう。
▶この記事はこんな方にオススメ!
・タイの刀剣文化を学びたい方
・タイの歴史が好きな方
タイの刀「Dha(ダー)」
Dha(ダー)とは?
スペルが同じためサプリメントの「ディーエイチエー」と読みそうですが、刀の方はダー。
dhaは本来ビルマ語で剣や刀という意味を持ちます。
ดาบ(daab)ダーブ
このdhaはタイのみならず、ミャンマー、ベトナム、カンボジア等の東南アジア内で使用される刀剣類を指し、形状、材料含め多種多様です。
またdhaの起源についても東南アジア内という括りで決定的な情報や根拠が明らかになっていません。
ただWikipediaによると少なくとも13世紀あたりの中世には存在していたようです。
タイのdha(daab)の特徴
The Dha: An Ancient Sword from Thailandによると、
種類は他にもありますが、大きさは50cmで、重さは500gと軽量なものが多く、刃の湾曲の仕方が日本刀に似た剣が存在していました。
もちろん90cmほどの長いdhaも存在し、先端がやや尖っている事と柄が長い事も特徴です。
他にも鍔(刃と柄の間にあるガードする部分)があるなど日本刀をイメージさせられますよね。
このようなナイフタイプもdhaの種類の一つです。
以上のような剣がタイでは20世紀まで戦争や護身用として使用されていました。
次の章では日本刀の要素をなぜタイのdhaが持っているのかについて見ていきましょう。
日本刀がタイの刀剣文化に影響を与えた?!
日本刀の要素がタイの剣に取り入れられるプロセスと根拠を研究したものがあります。
「タイにおける異文化の受容と変容ー13世紀から18世紀の対外交易品を中心としてー」
こちらの研究によるとタイで日本刀が受容された時期を3つに分類しています。
(以下はその研究結果と資料を参考にお伝えしていきます。)
1期が16世紀後半から朱印船貿易の終了(1635年)まで、2期が20世紀前半、3期が現代の21世紀と結論付けられています。
第1期 16世紀後半から朱印船貿易の終了まで
(出典:Wikipedia)
徳川幕府初期の時代にはタイ(アユタヤ)には日本人町が存在していました。当時はそれほどタイと日本は交流をしていたのですね。
これには、当時のアユタヤの王がビルマからの攻撃に備えるため戦闘経験が豊富な侍を傭兵として採用した、戦国の世と比べ平和な時代になり浪人となってしまった侍が仕事を求めて出国した等様々な要因があります。
山田長政の例は有名なのではないでしょうか?もしよろしかったら、以下の関連記事をチェックしてみてください。
これらの過程で日本刀は実際の戦闘にも用いられることもあり、その後タイで日本刀を模して作られた事が研究により明らかになっています。(後ほど解説いたします。)
他にも国王に対しての贈答品としても扱われていました。
第2期 20世紀前半
第二次世界大戦時にタイに駐留していた大日本帝国陸軍が武器の一つとして軍刀を持ち込んだとされています。
(日泰攻守同盟条約により日本とタイは同盟国で共闘していました。)
そして1945年に日本は降伏をし、武装解除され軍刀もタイに放置されたことがきっかけの一つとも考えられています。
第3期 21世紀
現代では骨董品として輸入されたのではなく、タイ国内でタイ人鍛冶工が過去に流入した日本刀をモデルに刀剣を作成したという事。
以上の3つの時期がタイで日本刀が受容された時期と考えられています。実際にこの研究では、その根拠が2つ挙げられており、
- 日本製の刀身にタイの外装を加えた王室に伝わる刀剣
- タイ製の刀剣に見られる日本刀の特徴
1つ目は、文字通り日本製の刀にタイの外装を施しているためイメージしやすいですね。
2つ目は、見た目が日本刀と同じだが機能性に欠ける事が認められていました。
ex)拵(鞘や柄等の刀剣の外装)が日本刀と同じ見た目(痕跡器官)だけど片手で刀を扱いづらい等と言った機能性の欠如。
タイの方々は、各部位の機能を正確に理解せずに模造の段階で装飾として刀剣を製作したとも言及されていました。
以上が日本刀がタイの刀剣文化の中の要素として組み入れられる段階と根拠でした。
伝統的な武術「クラビー・クラボーン」
Sergio Piumatti – Flickr: 00282-00038-00, CC 表示-継承 2.0
現代では刀を使う機会は中々ありませんよね。しかしタイでは古くから伝わる刀を使う格闘技、クラビークラボーンがあるのです。
クラビークラボーンはタイの伝統的な武術で武器を使った格闘技です。現代のタイに残る刀剣文化の一つだと考えられています。
กระบี่กระบอง(krabi krabong) クラビークラボーン
クラビーは刀の事を指し、クラボーンは棒を意味します。扱う武器も1章で紹介したDha(Daab)や槍、盾など様々です。
演武としてタイでは親しまれている伝統的な格闘技とされています。ルール上相手に武器を直接当ててはいけないことになっております。
勝敗は選手の技量、体力、戦略が審判によって判断されるそうです。
Wikipediaによるとクラビークラビクラボーンは、陸軍の訓練や学校の授業の科目の一つとして取り入れられたことがあります。
本物の刃を使わないのであれば一度はやってみたいですね(笑)。
バンコク国立博物館で見る刀剣
中央宮殿に眠る王国の武器たち
中央宮殿にはこのように実際に使われていた王国の武器が展示されています。daabや槍等多様です。
どうでしょう?全部が日本刀っぽいとは言えませんが、一部それらしいものはありませんか?
上から2番目
個人的にはこの中でこの刀が日本刀の要素を強く持っている気がします。鍔や刀身の湾曲の仕方が日本刀に見えます。
他にも日本刀の要素を持つ刀がいくつかありました!
全て200年前の物になります。当時の国王や軍のリーダーが所持していたと考えられています。
ラタナコーシンスタイルと解説には書かれていましたが、日本刀との関連性などの解説はありませんでした。
銃も展示されていますね。火縄銃でしょうか?タイも中世の終わりには貿易により鉄砲が入ってきています。
それにしても先端がどう見てもドラゴンですよね(笑)。16世紀辺りの当時のタイ軍が使っていたと解説されています。
写真では武器しか載せていませんが、博物館には仏像や当時の生活に使われていた家具、王室関連の陶磁器など多くの物が展示されています。もしよろしかったら、観光してみてください。
アクセス・入場料金
(C)OpenStreetMap contributors
住所:QF5R+6MP, Soi Na Phra That, Phra Borom Maha Ratchawang, Phra Nakhon, Bangkok 10200
最寄りはMRTのサナームチャイ駅です。ただそこから博物館は徒歩で20分程度歩くことになりますので、タクシーかバイクタクシーを使った方がいいです。
営業時間は9:00から16:00です。定休日が月曜、火曜日と祝日です。
入場料は200バーツ(約800円)です。
さいごに
いかがでしたか?
今回はタイの刀剣文化の歴史には日本刀が受容され、現代ではクラビークラボーンという格闘技や博物館にて展示される美術品、骨董品として継承されている事をお伝えしてきました。
クラビークラボーンはバンコクで体験できるアクティビティの一つですので、私も体験してみたいです!
またバンコク国立博物館も刀剣のみならず見所満載です!バンコクに滞在されている方はぜひ行ってみてください!
それではコープクン・クラップ!またお会いしましょう!