タイの玄関口!空港運営企業AOTの銘柄分析

 

サワディーカップ!LABタイ語学校です。

コロナ規制も緩和されている中でタイに旅行を考えられている方や、タイから海外へ旅行を考えられている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そんな時に、飛行機利用で使う空港。タイに入国される方でよく聞くのはスワンナプーム空港や、ドンムアン空港だと思います。

これらの空港、実は同じ会社が運営をしていることをご存知でしょうか。

実はこれらの空港のみならず、タイにある国際空港の6つを同じ会社が運営しているのです。

その会社は本ブログで取り上げますAOT ( Airport of Thailand )という会社になります。

本ブログではAOTの会社紹介、株式市場におけるAOTの立ち位置を紹介していきます。

 

 

 

 

1.AOTの沿革

 

AOTは元々AAT ( Airport of Authority of Thailand )という国営企業でした。

2002年に民間企業となりましたが、一方でタイ財務省が現在でも70%の株式を保有していますので実質的に財務省傘下の子会社ということになります。

AOTはタイ国内の空港運営ビジネスのリーダー的立ち位置になっており、6つの国際空港(ドンムアン、プーケット、チェンマイ、チェンライ、ハートヤイ、チェンライ、そしてスワンナプーム)を運営しています。その他国内空港等を合わせると計39の空港を運営しています。

元々はドンムアン空港が国際空港としてメインでしたが、非常に強い航空需要の伸びを受け、2006年にスワンナプーム空港が開港し、現在ではスワンナプーム空港がメインの国際空港となっています。

スワンナプーム空港は年最大4,500万人の乗客と300万トンの貨物を収容する能力を持っており、フライトは1時間に最大76便を運行するキャパシティを持っています。

 

 

2.収益構造

 

AOTの主な収益は 1.航空収入と2.非航空収入から成り立ちます。

1.航空収入に関しては飛行機の着陸料であったり航空機サービス料が挙げられ、2.非航空機収入に関しては不動産賃貸料や空港内での売店利用料などのサービス料等が挙げられます。

2023年度第一クウォーターの決算資料を見ると、1.航空収入の割合は49%で、2.非航空収入は51%となっています。

長いスパンで見た際に売上に貢献しているのは主に飛行機の着陸料であり、2005年から比べると約20%ほど、飛行機の着陸料が増加しています。ただ、コロナパンデミック以降こちらの売り上げは大幅に減っております。

 

 

3.業績分析

 

それでは決算資料をもとに具体的な数字を確認していきましょう。

 

まず、こちらが直近の業績推移となります。

2019

2020

2021

2022

Total revenues

64,566.79

33,133.92

7,543.97

17,891.86

Revenues from sales or services

62,783.41

31,179.10

7,085.60

16,560.02

Other incomes

1783.38

1954.82

458.37

1331.83

Total expenses

33,082.48

27,797.34

28,089.00

31,755.51

Profit (Loss) before income tax expense

31,484.31

5,336.58

(20,545.03)

(13,863.65)

Income tax revenues (expense)

(6,388.76)

(1,038.04)

4,173.17

2,887.59

Net Profit (Loss)

25,026.37

4,320.68

(16,322.01)

(11,087.87)

( https://investor.airportthai.co.th/highlights.html より筆者作成 )

 

中国武漢で第一例目のコロナ感染者が確認され、その後数ヶ月で世界的なパンデミックにつながりましたが、その流行に合わせてAOTの業績も劇的に悪化していきました。

2019年度約645億バーツ(1バーツ3.9円として約2,500億円)あった総収入も2020年度には半分ほど消失しており、さらに翌年2021年度には約75億バーツほど(約290億円)まで落ち込んでいます。

また、負債の観点から見ても当時のAOTは厳しい環境に直面していたことがわかります。

2020年10月の負債額はトータル約305億バーツでしたが、翌年2021年10月の負債総額は約816億まで膨れ上がっています。これまでの倍以上の借入を行い、困難な局面を乗り越えようとしていたのが伺えます。足元の負債額は約803億バーツと縮小してきており最も困難な局面は乗り切っているのではないかと考えられます。

 

 

4.株価分析

 

続いて、現在の株価状況を確認していきましょう。(2022年12月31日のデータを用いています。)

以降、簡単ではありますが、金融の専門用語が出てきます。言葉の意味を知りたい方は併せてこちらもご確認ください!( 株式投資を考えている人必見!株式投資の基礎 )

 

 

   〜Airport of Thailandの株価基本情報(2022年12月31日基準)〜

株価 75.00THB

時価総額 1,054,601million THB (2021年10月から2022年9月までの平均)

PER N/A

PBR 10.54

ROE 0.34%

債務/資産 43.8%

 

 

時価総額

 

まず、時価総額に関してですが、1,054,601million THBになります。日本円で換算すると約4.1兆円ほどとなります。(1THB = 3.9円で計算)

時価総額で考えると日本企業では日本電産やキャノンあたりが同様の規模になります。

非常に大きな企業であるといえるでしょう。

( もしタイの大企業にご興味があられる方はぜひ下記の記事も併せてご確認ください。タイの上場企業時価総額ランキング 5社 )

 

 

PER

 

次にPERを見ていきましょう。

上記データではPERにはN/Aと記載があります。

これは一体どういうことなのでしょうか。

PERは
株価 / 一株あたり利益

によって求められます。

そのため分母の数字がゼロ以下( つまり業績は赤字状態 )になると正しいPERを求めることができません。

そのため上記データにはN/A ( Not Applicable )と記載になり、表示ができないということになります。

ちなみに、遡れるデータで2018年のPERがありましたが、当時のPERは37.22倍でしたので

コロナ前は非常に期待値の高い企業であったことが窺えます。

 

 

PBR

 

次にPBRを確認してみましょう。

PBRは10.54倍となっています。見方にもよりますが、これは十分割高といえる水準になると思います。

2018年のデータではPBRが6.5倍であり、コロナ以降PBRの水準が高まっています。

PBRの水準が高くなる要因は主に2つあると考えられます。

PBRの計算は
株価 / 一株あたり純資産

になるため、

一つは株価水準が大きく上昇すること

もう一つは一株あたりの純資産が減少していくこと

です。

2018年と比較すると株価は当時の65THBよりも高くなっています。

また、一株あたり純資産に関しても2018年は10.07THBであるのに対し、2022年は7.12THBとなっています。

そのため、PBRから現在の株価を確認すると

一株あたりの純資産は減っているにも関わらず、株は高値を維持しており割高感が出ている

ということが推測できるでしょう。

 

 

ROE

 

次にROEを確認してみましょう。

ROEは0.34%となっています。

別の記事でも言及したように、日本の上場企業の平均的なROEが8%台と言われている中で、AOTのROE水準は決して高いとはいえないでしょう。

ただROEも計算過程の分子に純利益も用いるため、足元航空需要が完全に回復していない中ではどうしても高い数値は出づらく今の状況下ではしょうがないともいえると思います。

参考までに2018年のROEは18.29%であったため、前回ご紹介したCP ALLの17.3%と比較しても決して見劣りすることがなく、しっかりと株式資本を使って効率よく稼いでいた企業であるといえるでしょう。

 

5.まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

タイ入国の際の大きな玄関口である空港を運営するAOT。

足元の決算報告書ではまだまだ厳しい環境であるということが伺えると思います。

AOTはコロナパンデミックの影響を最も受けた企業の一つであるといえるでしょう。

しかし、今後観光需要の回復により業績の回復は大きく見込めるとも考えられます。

ぜひタイ企業の研究、株式相場の学びに役立てば幸いです。

 

●投資には、信用リスク・価格変動リスク・為替変動リスク・カントリーリスク等が存在します。あくまでご自身の責任及び判断に基づき取引を行ってください。

 

 

 

 

 

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