カンヌ国際映画祭パルムドール賞(最高賞)受賞。タイ映画「ブンミおじさんの森」が、再燃!

サワディーカー!LABタイ語学校です。

2010年にタイが舞台のタイ人監督による映画「ブンミおじさんの森」が、カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドール賞を受賞。タイ映画初の快挙でした。約10年の時を経て、このタイ映画が再び脚光を浴びはじめています。その理由を探ってみました。

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿

 

1.現実と過去と未来が交錯する、ファンタジーな世界のあらすじ

舞台はタイ東北部のある田舎。病気によって死期が迫った主人公のブンミの元へ19年前に亡くなった妻、行方不明になっていた息子と再会。ふれ合ううちみさまざまな不思議な出来事に遭遇していくというストーリーです。亡き妻フェイは前ぶれもなく、ブンミおじさんと親戚が食事をしている席に、するりと現れます。「あっ、フェイ、久しぶりだなぁ」と、少しだけ驚いたあと会話がナチュラルに開始。

「私には時間の概念がないのよ」と答える亡き妻。あたかも、ずっとそこにいたような錯覚に陥ります。が、「お水でも飲めば」といってコップをフェイの目の前に置こうとすると、身体が半透明になるシーンがあり、「 ああ、亡くなっていたヒトだったのだ」、と思い起こされます。行方不明だった息子のブンソンも猿の精霊となって現れます。なんだか不思議。このあたりが、ファンタジーだといわれるゆえんでしょうか。

その後のストーリーとして、自宅でブンミおじさんが人工透析を受けるのを亡き妻フェイが手伝ったり、営む農園や遺産を整理して親戚に渡したり。そして、またもや唐突にブンミおじさんが「行かなければならない」と言葉を発し、森へと出かけていきます。この時の森の様子がとても美しく、虫や鳥の鳴き声、湖の中の音などがとても印象的。ある洞窟に到着すると、そこに横たわりながら「ここは私の生まれたところだ」とブンミおじさんは語り、その後、静かに息を引き取ります。

物語はここで終わらず、お葬式のあと、とても不思議なエピソードがあり、不思議なまま、すーっと終わります。「えっ、ここで終わるの?」というところで、突然に。このラストシーンは、それぞれに解釈してくださいね、という意味ではないのかなぁと感じました。

 

 

2.タイの奇才、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の素顔と映画裏話

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督が「ブンミおじさんの森」公開時に訪日した時の映像があったので、この時の質疑応答から監督の言葉を抜粋してみました。

2-1 監督の幼少の頃の居場所は、病院と映画館と家

「両親が医者だったので、幼少の頃はほとんど病院で過ごしました。私の子供の頃の居場所は病院と家と映画館の3つに限られていました。というのも、子供の頃は内気で内向的な性格だったので、暗闇である映画館に魅せられていたのです。世界への窓のような感覚もありました。3、40年前というのは、時間がもっとゆっくりと流れていたような気がします。今でも映画館というのは、私自身をプロテクトする場所として利用しており、自分自身が映画を撮る意義は、言葉にはできないものを伝えるコミュニケーションツールとして考えています」

2-2 キャスティングは素人!?

映画のキャスティングは、素人に近いヒトを配役。ブンミおじさん役は、キャスティング会社に依頼して探したそうだが、彼は小さい役しかしたことがなく今回が初めての主役抜擢。本職は主に屋根の修理をする建築関係だとか。妻役のフェイは監督がたまたまバーで出会ったヒトで、本職は歌手なのだとか。

記者からの「虫や鳥のサウンドが多くちりばめられているのは、目に見えないものへのオマージュか?」との問いに対して監督は「おっしゃる通り、生と死をテーマに扱っている作品なので『生命』を意識しました。(虫や鳥の)姿やカタチは見えないけれども、生命が満ちあふれている世界を表現しました。ジャングルの中で長時間撮影。そこで拾ったいろいろな音を取り入れた結果、豊かで幻想的な音をミックスすることができました」

2-3 美しく、独創的な映画の作り方

ウィーラセタクン監督の作品は、見えないものに息づかいが感じられるものが多い。「映画というのは、心を癒してくれるものであり、自分自身の誇りをもたらせてくれるものであり、世界を見つめる私自身のまなざしでもあります。カメラを見つめると自信を取り戻すことができ、カメラがないと不安になってしまいます。1990年代に山形映画祭で舞台挨拶をしたのですが、そのときは緊張してしまい、あまり自分自身を表現することができませんでした」

映画の作り方としては、日々感じることを小さなノートにメモし、それがやがて映画になるという方法なのだとか。「論理的ではないのですが、美しい過程だなと思っています」

2-4「ブンミおじさんの森」は、検閲にかかった!?

「お坊さんのシーンが検閲にひっかかったと聞いたのですが」という記者の問いに対して監督は「結果的には検閲によってシーンが削られるということはありませんでした。公開当時、タイは政治的にとても荒れている状態だったのですが、この映画はその頃の人々の乾いた心にぬくもりを与えるものだと理解してもらえたと考えています。また、パルムドール賞という、それこそ何か見えない力が働いたのではないかと思います」

 

 

3.タイ映画「ブンミおじさんの森」が今、再ブレイクしている理由

この映画はタイの僧侶による著書「前世を思い出させる男」を基に描かれています。つまり、生と死と死後の世界を独特な世界観を描いたものです。

世界が混沌とし、生と死について深く考えることが多くなった昨今。家にいることが多くなり、映画や動画を見る機会が増え、アタシもこの映画に出会ったわけです。涙するでもないけれども、突拍子もないシーンにクスっとし、普段であれば「そんなことあるワケない!」と思うシーンがあったのですが、「そんなことあるワケない!」と思っていたことが次々と起こっている今、この映画をすんなりと受け止めることができたように思います。

「世界はより小さく、より西洋的に、ハリウッド的になっている。でもこの映画には、私が見たこともないファンタジーがあった。それは美しく、まるで不思議な夢を見ているようだった。僕たちはいつも映画にサプライズを求めている。この映画は、まさにそのサプライズをもたらした」。(カンヌ国際映画祭 審査委員長 ティム・バートンの言葉より)これは10年前に発せられた言葉ですが、今、この時代だからこそ、心に響くような気がする、そんな映画です。

 

 

4.You Tubeで公開されている「ブンミおじさんの森」。そのURLをご紹介

イマジネーションとユーモア。

生と死の優しい洞察。

いつかどこかでまた会える。

そんなキーワードがちりばめられている「ブンミおじさんの森」。このURLからご覧になれます。

【 ブンミおじさんの森(日本語字幕付き)】

 

 

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿でした。

 

ヘンドゥワイ・เห็นด้วย

「ヘンドゥワイ」は日常生活でもお仕事の場面でも使えるタイ語です。

直訳すると「賛成」なので、シンプルに「賛成」と表現したい場合は「ヘンドゥワイ」を使いましょう。

もし、今回紹介するフレーズの全てを覚えられない場合は、とりあえず「ヘンドゥワイ=賛成」だけは覚えておきましょう。

<賛成・反対>に関するタイ語音声とタイ語記事コチラ

 

LAB thaiko先生のブログ

LABthaiko先生のブログは2018年に産まれて日々多くの記事を作成しています。タイの様々なお役立ち情報を時にはタイ語を交えながらの記事にしたり、ニュースサイトとして、情報媒体としての役割を果たせるよう、もっと皆さんにタイについて知って頂けるようこれからも情報を発信していきます。