シンガポールからタイへ。日本製鉄が東南アジア地域の統括拠点を移動

サワディーカー!LABタイ語学校です。

2021年4月、 日本製鉄は東南アジアにおける統括機能をシンガポールからタイの現地法人へ移行。同時にバンコクにある「タイ日本製鉄」を「東南アジア日本製鉄」へと社名変更(英語表記は変わらず)。統括事業に関わるシンガポール駐在員もタイへ移りました。

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿

 

1.新日本製鉄と住友金属が統合してできた「日本製鉄」ってどんな会社?

日本製鉄株式会社は、現在、日本最大の鉄鋼メーカー。世界においてもArcelor Mittal(ルクセンブルク)、宝鋼集団(中国)に次ぐ世界第三位の規模を誇ります。製鉄事業、エンジニアリング事業、化学・新素材事業、システムソリューション事業など、大きく分けて4部門にわかれており、なんだかとってもむつかしそうなことをやっている企業です。製鉄事業においては、船の厚板、自動車や電気製品の表面処理、鉄道のシャフトや建材やチタン、ステンレス鋼の製造など、幅広い鉄鋼製品や部品を作っています。

日本製鉄は、新日本製鉄と住友金属の合併によって2019年4月に誕生した新社名です。読みは「にっぽんせいてつ」、英語社名は「Nippon Steel」。それまでも両企業は互いに手を携えて、タイでの事業に協力し合っていました。話は少しずれるのですが、 バブル時期に新日本製鉄が「やわらかい会社です」というキャッチコピーの企業広告を出していたことを思い出しました。鉄はカタイ、お固い企業イメージを一新しようと出稿されたものでしたが、西武百貨店の「おいしい生活」というキャッチコピーとともに、とても話題になりました。

合併の背景としていわれていることは、中小いくつも繰り返される統廃合に終止符をうち経営資源に集中するため、莫大な費用と時間がかかる高炉建設を迅速にすすめる体制整備、鉄鋼需要が拡大するアジアをはじめとする海外展開を見据え競争力の強化が不可欠とされたものとされています。「総合力世界ナンバーワンの鉄鋼メーカーへ」という、企業スローガンにその意気込みが添えられいます。

 

 

2.タイ唯一の部門も!「タイ日本製鉄」の業務内容をわかりやすく解説

実は タイ日本製鉄(NS-Siam United Steel Co., Ltd.=通称NS-SUS)が現在のカタチになったのは、2016年のこと。つまり「日本製鉄」が誕生する前に「タイ新日本製鉄」があったということなのです。新日本製鉄が日本製鉄に変革を遂げた後も「タイ新日本製鉄」は 「タイ日本製鉄」として、その業務をそのまま受け継ぐことになります。

始まりは1995年と古く、タイのセメント会社「サイアム・セメント・グループ」との合弁会社としてスタートしました。そして、統合経営がなされたのが2016年というわけです。NS-SUSの主な事業内容は、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板の製造、販売。よくわからないので、調べてわかりやすく解説してみます。

冷延鋼板というのは、延ばされた合板のコイルを酸で洗い、常温で、より薄く、均一に延ばす技術のこと。主に自動車や家電、建材、事務機器、めっき鋼板用素材に使われています。近年、高級化、軽量化、表面の美しさ、強さ、加工のしやすさがますます進んできており、この技術は世界でも評判が高いのが特長です。

現在、タイで自動車用の鋼板を作る工場としては、NS-SUSが唯一の存在。冷延、メッキ(金属などの表面にコーティングを行ない、装飾や強度、耐久性を高めること)を一環で行なっていることで、製造日数などを短縮することが可能とされる現場を作り、それが強みとなっています。

今回のテーマでもあるシンガポールからタイへ拠点を移行させた理由のひとつとして、トヨタや日産、そしていすゞなど多くの日本車メーカーがタイに進出していることが挙げられるのではないでしょうか。愛知県豊田市には、自動車関連企業が多く存在するように。タイでは自動車やバイクのほとんどが日本のメーカーです。これは、タイに暮らす日本人として誇りでもあります。

 

 

3.シンガポールからタイへ拠点移動した大きな理由は、海底パイプライン!?

以前、タイ周辺の海域で、石油の掘削が始まっているという話を当ブログで紹介しましたが、NS-SUSの拠点がシンガポールからタイへ移行した大きな理由に、この石油掘削関連事業があるようです。というのも、海底パイプラインを含むタイのシャム湾に新規に建設する天然ガス開発用プラットホームの設計、調達、製作、備え付け、試運転を含む工事一式を受注したことが、移行に大きな影響を与えたようです。

以前、メッキ関連に携わるヒトに話を聞いたことがあり、その時の話からアタシなりに解釈を行ないたいと思います。海底にある天然ガスを地上へと運ぶためには海底にパイプライン、つまり大きな管のようなものが必要です。削堀作業ももちろん大変なのですが、仮に天然ガスが見つかったとしても、それを地上へと運ぶラインもとても重要で、せっかく掘り当てたガスもそれを移動させる間に消失はもちろん、成分が変化してしまっては、元もコもありません。

海底パイプラインにおいては、設置はもちろんのことその内部がとても重要で、そこで必要となってくるのが、メッキ技術なのです。金メッキという言葉を聞いたことがあると思います。たとえば錆びやすい金属のアクセサリーに金メッキをすることで、錆びにくくなったりします。もちろん、ホンモノの金ではないのである程度は劣化しますが、何もしないよりも少しは錆にくくなります。

たとえば、ステンレスでできているキッチンのシンク。そこにもメッキが施されています。ステンレスは元々錆びにくい材質ではあるのですが、そこにメッキという意匠、いわばコーティングがなされているため、錆びにくいだけではなく水分に強い材質へと変化します。ガスを移動させる、ましてや海底となると外側はもちろん、その内部も重要になってくるため、とても重要な技術なのです。天然ガスの削堀に日本の技術が採用される、というのは、とてもうれしいことであります。

 

 

4.「タイ日本製鉄」は優秀!TPM(企業の体質改善)活動において「ワールドクラス賞」を受賞

タイ日本製鉄、NS-SUSは、2020年度の日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が提唱するTPM活動(Total Productive Management)の「ワールドクラス賞」を受賞しました。「ワールドクラス賞」は、5段階ある賞のうち最高の賞で、タイにおける鉄鋼企業として初めての受賞なのだとか。NS-SUSにおけるTPM活動は、2自主保全の推進、計画保全のレベルアップ、マネジメントレベルの向上などに、取り組んだことが受賞の要因であした。

TPM活動はというのは、生産システムに存在するあらゆるロスをゼロにする活動のこと。そのためには、人と設備、そして企業自体をも含むあらゆる体質を改善しなければならず、生産・製造部門だけでなく、その間接的な部分も含めたビジネスプロセス全体のことを意味しています。

TPM(Total Productive Management)活動といのは、社団法人日本プラントメンテナンス協会(通称:JIPM)が開発したプログラムのことで、あらゆる部門にわたって「トップから現場第一線の従業員まで」、全員参加による全社的な管理を展開している「災害ゼロ、不良ゼロ、故障ゼロ」を目標にしており、生産システムの効率化を極限まで追求した、企業体質づくりが狙いとされているものです。

これは、企業としてはうれしい受賞で、ましてタイにおいて初めての受賞ということで、日本をはじめ、タイ側でもトップから現場の人間まで、とても喜んだということです。

 

 

5.偶然、今日「日本製鉄」室蘭製作所のニュースが飛び込んできた!

この原稿を執筆した前日の6月14日、北海道室蘭市の日本製鉄室蘭製鉄所から「高炉ガスで発生したガスを吸って3人の作業員が体調不良を訴えている」という一方が入ってきました。幸い、生命には別条がないようで安心しましたが、世の中を良くしていく、変えていく、創造する最先端技術には、不確かで時にはツライ現実を乗り越えなければならないこともありますが、どうか、世の中が安全に平和で、便利になっていくことを願うばかりです。

 

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿でした。

 

 

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私はちょっと税金の計算についての知識を持っています。

<経理の場面>に関するタイ語音声とタイ語記事コチラ

 

 

 

 

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