テコンドー、ボクシング。東京オリンピック2020のタイ人メダリストの素顔

サワディーカー!LABタイ語学校です。

1年延期で迎えた東京オリンピック2020。42人のタイ人選手が参加しました。テコンドーで金メダルを獲得したパニパク・ウォンパタナキ選手、ボクシングで銅メダルを獲得したスダポルン・シーソンディー選手の素顔をご紹介します。パラリンピック情報も。

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿

 

1.タイで韓国発祥のスポーツ=テコンドーが人気?になった理由

テコンドーとは、韓国が発祥の格闘技のようなスポーツ。柔道と似ていますが、飛び蹴りや後ろ回し蹴りなどの足技やこぶしによる技もあり、まさに格闘技の要素がある激しいスポーツです。

 

1-1 タイで人気のきっかけは韓国人コーチ=チェ・ヨンソクの就任

タイ人選手が初めてテコンドーでオリンピックメダルを獲得したのが、2004年のアテネ。銅メダルでしたが、タイではテコンドーがとても人気のスポーツとなりました。これには、2002年に来泰した韓国人コーチ=チェ・ヨンソクの影響が大きく、タイのテコンドーレベルを世界水準まで高めた、とタイ国民の支持も高いものがあります。

実は、あるタイ人テコンドー選手と練習方法をめぐってトラブルになったことがあるチェコーチなのですが、その際、どちらが正論か、というSNSのアンケート調査では98%ものヒトがチェコーチを支持。その際、一度は韓国に帰ってしまうほど傷心したチェコーチなのですが、タイ人テコンドーファンの熱いコールによって再びタイへ戻り、この度、テコンドーでタイ初の金メダルをもたらせた立役者でもあります。ちなみにチェコーチはタイへやって来て約20年。タイ語はベラベラだそうです。

 

1-2 タイのテコンドー発展に、韓国企業がバックアップ

あまり知られていませんが、有名な韓国企業もスポンサーとして名を連ねています。家電メーカーコーウエイは、世界大会におけるタイ代表選手らのユニフォームやテコンドー着、賞金などを支援。同じく家電メーカーのサムスンはタイのテコンドー選手団にコンピュータや冷蔵庫などの自社製品で支援。アシアナ航空はタイのテコンドー選手が海外に遠征へ出かける際には無料の航空券を提供しています。

「韓国企業が大きな関心を示してたくさん後援しているため、タイ選手の士気が上がっている。今後、さらに良い成績を出し、タイ国民に喜びを与えたい」とチェコーチは語っています。

 

 

2.【金メダル】テコンドー選手パニパク・ウォンパタナキ(通称=テニス)の華麗なる経歴

東京オリンピック2020で、テコンドーの金メダリスト、パニパク・ウォンパタナキ(通称=テニス)は、準決勝で日本の山田美論選手、決勝戦では、スペインのアドリアナ・セレソ イグレシアス選手を破り、見事金メダルを獲得。テニス選手は、2016年リオオリンピックの銅メダルに続いて、2つ目のメダルとなりました。

 

2-1 2016年リオ・オリンピックでの銅メダルに不満!? 一時離脱からの挑戦

彼女はスラタニ出身で、チュラロンコーン大学を卒業した23歳。ただ、テコンドーの練習が苦手、筋力やスタミナがあるわけでもなく、おまけに泣き虫という逸話もあるのですが、そんなテニス選手を変えたのが、チェコーチといわれています。

2016年のリオオリンピックで銅メダルを獲得したテニス選手ですが、実は金メダルをとれるチャンスがあったということで、落胆。テコンドーを一時期、辞めてしまいます。その期間、約2ヵ月。これが短いのか長いのかはわかりませんが、再び、やる気を取り戻し練習にはげみ、2017年の世界テコンドー選手権で銅メダル、2018年のアジア競技大会では金メダル、2019年の世界テコンドー選手権でも金メダル。と確実に実力をつけていきます。

さらには、2019年にはワールドテコンドーから女性アスリートオブザイヤーを受賞。競技選手としてだけはなく、名実ともに一流選手へと駆け上がり、今回の東京オリンピックで金メダル。「あの時やめなくてよかった」という想いは、我々一般人にも共通する部分があるのかもしれません。

 

2-2 凱旋帰国。プーケットの「サンドボックス」での異例の高待遇

一夜にしてテコンドーのスーパースターの座を勝ち取ったテニス選手は、7月26日プーケット空港に到着。彼女の家族や政府関係者らが迎えるなか、タイへ凱旋帰国を果たしました。プーケットの「サンドボックス」は、14泊15日は規定のホテルに宿泊しなければなりませんが、ワクチンを打ち、検査が陰性だった場合は外出が自由というものです。

「プーケットでは、シーフード、クッキー、ケーキ、バーベキュービーフ、魚などのおいしい料理を楽しみたいです」と女性らしいコメントと同時に次への目標へも言及。次のパリオリンピック 2024も視野にいれているそうです。タイの国技開発基金からテニス選手へ報奨金1,000万バーツ、さらには、彼女のチームにも約2,000万バーツの寄付を行なわれるとのことです。

 

 

3.【銅メダル】ボクシング女子フライト級選手スダポルン・シーソンディー(通称=テウ)のルーツ

テウ選手は、準決勝でアイルランドのケリー アン・ハリントン選手と対戦。判定で惜しくも敗退しました。ボクシングは3位決定戦が行なわれないため、テウ選手の銅メダルが確定。判定への不服があったという噂もありましたが、スポーツマンシップにのっとり、対戦者に対して敬意を表するテウ選手に好感を持ったヒトもいたはずです。

 

3-1 ボクシングを始めたのは、父親が経営するジムがきっかけ

ウドンタニ出身の29歳。テウ選手の父親がムエタイジムを持っていたため、自然と子どもの頃からムエタイに取り組んでいたそうです。ボクシングを始めたのは、11歳の時。きっかけは、ボクシングの試合に出る予定だったヒトの代わりに戦ったことでした。その後、ボクシングの魅力に取りつかれ、16歳の時にはタイ代表チームの一員にのぼりつめました。

しかし、初めてメダルを獲得したのは、7年前。2014年に韓国で開催された世界女子ボクシング選手権大会での銅メダル。2018年にはインドで開催された同大会で銀メダルをとりました。今年の10月には30歳の誕生日を迎えるテウ選手。彼女にとって今回が最後のオリンピックになるのでしょうか。

 

3-2 海軍での昇進。博士課程の授与

現在、テウ選手はタイ海軍の海兵隊レンジャー部隊に所属。さらに上位への昇進と特別賞の授与が決定したそうです。さらに、士官を目指すために必要な大学院の修士を希望しており、オリンピックでメダル獲得という名誉を得たという特例により、修士の授与がされる見込みです。

 

3-3 タイ人メダリストの賞金がスゴイ

タイ政府がオリンピックのメダリストに授与するとされている賞金、金は1,000万バーツ、銀は300万バーツ、銅は200万バーツ。また、オリンピックメダル受賞者には20年間の特別月給が与えられ、こちらは、金は12,000バーツ、銀は10,000バーツ、銅は8,000バーツ。テウ選手が今後どのような道に進むのかわかりませんが、タイに次世代のテウ選手を排出するための資金になるといいですね。

 

 

4.8月24日~9月5日開催の東京パラリンピック2020。このタイ選手に注目

ボッチャとは、重度脳性麻痺、もしくは重度四肢重度機能障がい者のために生まれたスポーツで、ヨーロッパが発祥。6つの球を投げたり、転がしたり、当てたりしながら、目標球により近づけるかを競うスポーツです。ボッチャのタイ人代表選手、ワッチャラポン・ボンサーは、ピアスや髪型など独特スタイルを貫いていること、天性の明るさが人気で、度々、タイのマスコミにも登場。

北部ローイの出身で、生家は貧しかったのですが、11歳でボッチャと出会い、パラリンピックに出られれば賞金がもらえると知り、本格的に取り組むようになったとか。選手でありながら、ボッチャの普及や後輩の育成にも力を注いでいる選手です。8月24日から始まるパラリンピック。ぜひ、ボンサー選手に注目してみたいものです。

 

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿でした。

 

 

LAB thaiko先生のブログ

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