お客さんは100%タイ人。コロナ禍真っ只中、タイでカフェをオープンした日本人カオルさんの話

サワディーカー!LABタイ語学校です。

現在、ピピ島、ランタ島などを含むクラビ州内で暮らす日本人在住者は20名前後といわれています。 もちろん、コロナ禍のなかクラビを去った日本人も多く、その大きな理由として仕事がなくなってしまったことが挙げられます。20年以上にわたり、ランタ島で知る人ぞ知る「B.B.バンガロー」を運営してきたカオルさんもバンガローの運営を休止せざるを得ませんでした。

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿

ランタ島は、日本を含め世界各国から来るツーリストで成り立っている島といっても過言ではありません。現在はコンビニだけでなく銀行まで閉まってしまっている状況。いつタイが解放されるかその先行きも不透明なため、外国からの観光客相手のサービス業を営むヒトは、ネガティブシンキングになりがちなのです。が、カオルさんは違いました。「B.B.バンガロー」休止から約10カ月後の今年2月、クラビ郊外にカフェをオープン。1ヵ月以上にわたり、自らの手でお店をデザイン、ペインティングするなどセルフプロデュース。このキビジイ状況のなか、なぜ、カフェをオープンするに至ったのか、そのエネルギーの源は何なのか、お話を聞いて来ました。

 

1.カフェオープンの前の話。タイに移住し、ピピ島からランタ島へ

さかのぼることン十年前。ピピ島のバンガローで働いていたタイ人のご主人とチェンマイで出会ったカオルさん。時を経て一緒にピピ島でバンガローを運営するようになります。ご主人の魅力、タイで暮らす決定打は何だったのでしょうか。

「夫のヒトの目を気にしない。自由なところがいいなと思いました。私自身も自由でいられましたし。タイの魅力は飢えることがないところじゃないかな。その辺りにはマンゴーがゴロゴロ成っているし、海に行けば魚はいるし。トウシすることなんてないでしょう」。

タイに惹かれた理由、アタシもまったくの同感です。

トラブルが重なり、ピピ島のバンガローを離れることになったカオルさん夫妻。バンガロー運営のノウハウを生かすべく、新たな場所を求めて目をつけたのが、ランタ島。現在の「B.B.バンガロー」の土地のオーナーから連絡があったのをきっかけに、何もなかった場所を切り拓き、夫婦で工事のヒトに混じり、バンガローを建てたそうです。現在は10数棟の戸建てバンガローが、広いビーチサイドの敷地内に点在していますが、最初は数軒から始めたのだとか。

「資金がなかったので、本当にじょじょに増やしていきました」。

日本人ならではの、きめ細やかな心遣いやサービス、そして、カオル夫妻の人柄もあいまって、宿泊施設だけではなく、併設するレストランの評判もグングンと急上昇。日本人だけではなく欧米人の高い支持を受け、順調に顧客が増えていきます。実は「B.B.バンガロー」は、ホテルブッキングサイト、アゴダなどには登録しておらず、そのほとんどを口コミやリピーター、紹介だけでやってきた、宿泊施設のなかでは珍しい成功事例なのではないでしょうか。

そして、コロナ。「B.B.バンガロー」休止。その話を聞きつけた世界にいるお客さんが立ち上がり、 カオル夫妻になんとか復活してほしいと、有志による「B.B.バンガロー」FaceBook応援サイトがアップされました。

「皆さんの好意に報いることができるのかどうかわからないため、最初は丁重にお断りしていたのですが、あまりにも熱いお話をいただき、夫と相談し『B.B.バンガロー』を愛してくださる皆さまのご好意を受けることにしました」

発起人となっているのはファラン(欧米人)。本当に信頼できるお客さんだったそうです。その話を聞いたとき、その謙虚で堅実な思考に、僭越ながら、日本人としてカオルさん夫妻を誇らしく感じてしまいました。

 

 

2.クラビ郊外、クロントム温泉近く「クロンポン」にカフェをオープンした理由

ご主人の出身地が、クラビタウンとランタ島のちょうど中間地点、つまり、今回カフェをオープンした「クロンポン」という地域でした。「何かしなければならない」という思いにかられ、最初は自宅のあるクラビタウン内で飲食店をするか、と考えていたのですが、やはり外国人客のいなくなったクラビタウンで商売をするのはむつかしいと考えたそうです。

「『B.B.バンガロー』を休まざるを得なくなり、何もしていない時間が苦痛になってきた頃のことです。クロンポンに夫がひょんなことから手にしていた小さな更地の土地があったのですが、そこに建物を建てて、ヒトに貸そうという計画が持ち上がったのです。ところが、建物を貸そうとしていたヒトが『違うところに場所を見つけちゃった』と、タイあるあるの突然の頓挫。その気になり建物を建て始めていたので『えーいっ、じゃあ、ここで何かしちゃおっか!』と、カフェをオープンすることになりました」

ランタ島の「B.B.バンガロー」が休止したため、働き先がなくなってしまったバーテンダーのスタッフを呼び、昼間は子どもたちも来られるアイスクリームをメインにしたカフェ、夜は生ビールを出すバーとしてオープン。カオルさん自ら指揮をとり、店舗を作ることになりました。

「この地域は本当に田舎で、いわゆるカフェの体裁を持った、小洒落たお店がまったくありません。なので、唯一無二の空間を作りたかった。田舎だし、閉鎖的だし、夫の実家近くだし、懸念材料はたくさんありましたが、それでも今までにはないお店をつくり、タイ南部のローカル地域に風穴を開けたかった」

そのひとつが生ビールの提供。バンコクなど都会では考えられませんが、南部のローカル「クロンポン」には、生ビールを置いているお店が一軒もないのだとか。酒屋を探すにもひと苦労したそうですが、生ビール樽を卸してくれる酒屋からクラビタウンからクルマで一時間半かけて自ら運ぶのだとか。けれども、そのこだわりはズバリ的中したようで、アタシがお店を訪ねた時、生ビールをピッチャーや空き瓶に入れて持ち帰るお客さんもいました。

 

 

3.お客さんもスタッフもすべてタイ人。タイで起業した日本人が抱える喜びと葛藤

カオルさんは美大を卒業、日本でもタイでも店舗ディスプレイ関連の仕事に携わっていたことがあるそうです。なので、新しくオープンしたカフェのバーカウンターからトイレに至るまで、そのデザインやペインティング、自らの絵とセレクトした絵画の設置とその配置、音楽のセレクトまで、そのすべてをカオルさんが担当。ランタ島の「B.B.バンガロー」と同じく、その個性的でアーティスティックな発想とキラリと光るセンスに脱帽してしまいました。

「カフェをオープンさせると決断した時から、オープンするまでの間で一番楽しかったのは、店を作っていく作業だったのかもしれません。もちろん、夫にはとやかく言わせません 笑。好きなように、感じるままに、店のデザインやペイントを手がけました。ゼロから創作と装飾を重ねて、ディスプレイデザインの楽しさを堪能しました」ご主人もカオルさんの感性をベタ褒め、絶賛していました。その信頼とリスペクトが混じったご主人の口ぶりに、思わずうらやましくなってしまったほどです。

反対に大変なことといえば、やはり、タイ人スタッフのハンドリングだとか。

「『B.B.バンガロー』の時は、お客さんのほとんどがファラン。つまりタイでのサービス業ではあるけれども、お客さんのほぼすべてが外国人なので、外国人としての心遣いやサービス、意見などを私が提案し、タイ人の夫やスタッフがそれを受け入れるというスタイルをとっていました。ところが、このカフェのお客さんは100%がタイ人。『こうしたほうがいいのでは?』というアドバイスも『タイ人は違う』とスルーされたり、押し切られてしまうため、戸惑ってしまうことが多々あります」

タイ人スタッフを抱える起業オーナーや、上司が抱えるこの悩みは、サービス業だけに限りません。カオルさんはどう対処しているのでしょうか。

「もう、あまりいろいろ言わないことにしました。この価値観や文化の違いは、いくら説明してもわかってもらえない部分もあるし、こちら側がイライラするだけですから。とは言いつつ、ついつい言っちゃうこともあるんですよねぇ。そんな時は、反対にいいところを見つけるように視点を変えて、自分自身がストレスをためたり、落ち込んだりしないよう方向転換することを心がけています」

ダメな部分だけに焦点をあてて不満を募らせるのではなく、ちょっとしたスタッフの成長やアイデアに喜びを感じられるよう心がけることは、日々を過ごす上でも参考になりますよね。なかなかむつかしいですけれどね。

 

 

4.ランタ島へ戻れる日がくるまで

 

バンガローオーナー、カフェオーナーとして、悩ましい状況にある現在。ましてココは日本人にとって異国タイ。カオルさんは、これからのことはどう考えているのでしょうか。

「いろいろ課題はあるのですが、ランタ島で『B.B.バンガロー』復活できる時を待っています。その日がいつになるのかわかりませんが、その時までに、私が何も言わなくてもタイ人スタッフだけでカフェがうまくまわるようになればいいですよね。まぁ、アレコレ言わないようにしようとは思いつつ、言ってしまっているのでしょうけれどね」

タイ在住20年以上。バンガローとカフェを経営する日本人カオルさんは、強くて、優しくて、天然で、ナイーブで、ユニークなオンナも惚れる女性でした。

 

タイ・クラビ在住のchinagaの寄稿でした。

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皆さんの協力で今回のビジネス(プロジェクト)が上手くいきました。
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「ビジネス」は「トゥラギット」、「プロジェクト」は「プロージェッ」と言います。

少し難しい単語なので音声を繰り返し聞いて覚えましょう。

また、「成功する」という言葉も少し難しく、「プラソップクワームサムレット」とタイ語で言います。

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